書店消えゆく世を憂うと共に。

日常

書籍は「かんたんで解りやすい」という土俵から降りればいい。

昨日、治療院近くにある比較的大きな書店が閉店しました。
数年前までは、大型書店が二軒、小さい書店が二軒ありましたが、これで五反田駅前の一軒のみとなってしまった。
今はAmazonでも購入できるし、書店もただ本を売るだけではやっていけないだろう。

単純に考えれば、書店がなくなるということは、それだけ「本が読まれないものになってしまった」ということです。
今は解りやすいものが最優先され、売れているものが良いものとされる傾向にあります。
売れているものが素晴らしい。
売れているものに価値がある。
確かに、そういう側面はあります。
特にこの物質社会においては売らなければ企業も生き残れない。
それは解るのですけれどね。

では、売れていないものに素晴らしいものはないのか?
売れていないものは、価値がないのか?
必ずしもそうとは言えないことが解ります。

今はあらゆるメディアに情報が錯綜しています。
テレビで取り上げられればそれだけで行列ができる。

本屋が消えていく背景にあるものは、本の在り方が変わったからとも言えます。
テレビが解りやすくて面白いものが受け入れられるよう、書籍も同様の方向に走り過ぎた点は否めない。
解りやすい。
難しいことをトコトンかんたんに。
それはもちろん素晴らしいことではあるのですが、「その利便性を本にまで求め過ぎた」のだ。

本は難しくて構わない。
むしろ、解らないからこそ本なのではないか。
解らないからこそ、本と向き合い続けることができるのではないか。
読んで、「そうだそうだ!」と思う本ばかりを読んでいても、しょうがない。
自分の思想を深める意味で、「やっぱりそうか!」という快楽は得られるのだろうが。
自分にとって都合の良い読書ばかりをしていたのが、ヒトラーだという。
自分の思想を確信していくためだけの読書をしていたようです。
要は自分にとって都合の悪い部分は、切り捨てていったのだそうな。

うーん。
たしかに、そうしたくなる気持ちは解りますよね。
ただ、例えば自分は右の意見に賛成だとしたら、左の意見もきちんと読み込まないことには、「私は右だ」とも言い切れないわけで。
逆のこともきちんと知らねば、本当の意味で右とも言えないわけです。

「解りやすく簡単に」の追求が行き過ぎた故、本というコンテンツは呑みこまれたのだと思います。
「解りやすく簡単に」を追求するのならば、動画には到底敵わないからです。
書籍が動画と同じ土俵に上がろうとし過ぎたのだと思います。
多くの人が、手っ取り早いテレビ、動画へと目を向けるのは当然のことだろう。

故、「情報を本屋に求めなくなった」のだと、私は思います。

先日、本を買いに行ったら、岩波文庫から真っ先に消えていた。
偶然なのか、欲する人間がいないからなのか、それは解らない。
ただ、多くの人が求める本は、平積みされている本なのです。
刺激的なタイトルが並ぶわけですが、あらゆる高刺激に慣れ過ぎたのが現代人なのです。
ただ刺激的なものを求めるだけならば、書店には行かないでしょう。
他にもたくさん高刺激的なものがスマホから溢れているのですから。

これからますます書店は減っていく方向に進むでしょう。
それを悪いコトと捉えるのではなく、これを機に、書店も在りようを変態して欲しいと思っている。
出版社も、エナジードリンクの如く「売れる本の追求」に進むのではなく、人間の歴史や文化と寄り添い、後世に良き物を残していくための出版社で在って欲しいと思う。
刺激対決ならば、テレビを始め、YouTubeやインスタなどには到底敵わない。
その土俵から降りて頂きたいと思っている。
大衆向けから一部の気合に満ちた人向けに本を売ってもらいたい。
もっと難しくて、簡単に理解できない本をたくさん並べれば良いのだと思います。
書店というのは、そういう場所であってもらいたい。
その方が、出版業界が本当の意味で活性化するのではなかろうか。

もっともっと難しい本を売る方向に進めば良いと思っている。
あり得ないことなのだと思うが。
読んでも、「まったく理解できない本」を売ればいい。
まったく理解できない自分を突き付けられることが大切なのだ。
「俺って何も知らないんだな。」
それが、本の役割だろう。

西田幾多郎の「善の研究」が、「あんなの簡単すぎるよ」という人もいるのです。
まったく理解できない私からすると、恐ろしいことです。
でも、それが本の役割なのではないでしょうか。

我々は、簡単、便利、効率的、効果的なコトに慣れ過ぎたのだ。

生きるとはどういうことなのか。
どうして人間存在があるのか。

そういうことを感じずに生きてきた結果が今出ているのだから。
これを機に、いろいろと変わる必要がある。
普遍的な問いと向き合うような本と出会える書店がもっとあったら嬉しい。

P.S.
書店最終日なので、最後、何か買って帰ろうと。
最終日だからだろう、いつもより随分たくさんの方がいました。
「め、珍しく混んでる…」

たまたま目に入った養老先生の書籍を買ってきました。

さて、YouTubeのセットを仕上げよう。

本日20時に関節エステYouTube更新です!(^^)!

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toru-imizu

関節エステプロフェッショナルアカデミー代表の射水徹です。

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